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Living Anywhereの精神で場所の制約から開放されよう

(Photo by Masahiro Takechi)

Text:藤村 聡
編集:トイロハ・ワークス編集部

どこででも好きなように暮らせる世界が近づいている

みなさんは過去一年間の時間をどこで過ごしていましたか? 5割がオフィスで4割が自宅で、残りは通勤電車の中だった、という人はいませんか? かくいう私も、これまでの社会人生活のほとんどはそんな感じでした。

現代を生きる我々は、先人たちのおかげで様々な自由を獲得し、経済の発展も手伝ってかなりの幸せを享受できるようになりましたが、ふと立ち止まって「私は、いま自分らしく生きているだろうか?」と考えてみると、いまなお多くの制約を受け入れながら暮らしていることに気付かされます。そんな制約の中でも特に大きなものの一つが「場所」という制約ではないでしょうか。すなわち、長いあいだ同じ場所に生活し、同じ職場に通い、それらを簡単には変えられないという制約です。

大都市にどんどん人が集中し、中心部にオフィスビルが立ち並んで空が狭くなり、郊外にベッドタウンが作られ、満員電車や渋滞する道路で毎日疲弊しながら通勤し、親の職場と子どもの学び場は離れているという家族はますます増えています。一方で自然豊かな地方では人口が減少し、生活インフラの維持も困難になっていくおそれが出てきています。

しかし、もしドラえもんの「どこでもドア」があったらどうでしょう。そして自宅や身の回りのものを「四次元ポケット」に入れて簡単に運べるとしたら。あなたはどう暮らしたいですか。例えば、夏は涼しい避暑地に、冬は温暖な南国に、秋は紅葉の美しい場所に、春は桜を楽しめる場所に、と四季に応じた地域を循環しつつ、通勤時間ゼロで働き、小学生のお子さんと平日でもランチを共にできる、といった暮らしはいかがでしょうか。

そんな暮らしは到底無理、とほとんどの人が考えています。「どこでもドア」も「四次元ポケット」も無い現実において、そんな生活をしようとすれば「仕事はどうする」「子どもが頻繁に転校することはできない」「引っ越し費用がかかりすぎる」など数多くの障害を挙げることができるからです。しかし、それらの障害の幾つかは既に過去のものになりつつありますし、残りの幾つかも解消できる可能性があります。

(Photo by Masahiro Takechi)

例えば仕事については、多くの仕事がリモートワーク可能になりつつあるのはご存知の通りです。ついに昨年にはテレビCMの題材にもなりましたし(サントリー クラフトボス)、実は私自身も最近はオフィス無しで活動しています。教育についても、インターネットを活用してリモートで授業が受けられるようにする工夫が幾つも試みられています。

そして住居を丸ごと動かしたり、容易に作り壊しができる仕組みに取り組んでいる企業や研究者たちもいます。これらに加えて、ジェレミー・リフキン著の『限界費用ゼロ社会』で描かれているようにエネルギーコストがゼロに近づいて移動にかかる費用が減っていくと、いよいよ「どこででも好きなように暮らせる」世界が近づいてきます。

廃校に100人が暮らしてみる「LA Week」という活動

私は社会人になってから20年間を大企業の中で過ごしてきましたので、毎朝決まった時刻に家を出て満員電車に揺られて会社との間を往復するという生活をすっかり当たり前のこととして受け入れてきましたが、3年前に転じた現職は「当たり前を疑う」という文化です。

そしてあるとき、ボスが「オフィスってなんで簡単に動かせないんだろうね」と言い出したところから議論が始まり、ついには「住むところだって簡単に動かせるべきなのでは?」という話に至りました。考えてみると、仕事の何割かは独りで作業しているのでインターネットがあればオフィス以外でもできてしまうことがありそうですし、満員電車の時間が少しでも短くなるなら歓迎なので、その可能性を追求してみたいと思うようになりました。

下の図は、縦方向に働く場所の自由度、横方向に家族との生活の自由度をとったものです。現在多くの人は左下、すなわち1ヶ所の家から1ヶ所の職場に通う生活です。最近のコワーキングや在宅ワークなどの環境整備により、縦方向の自由度が少し出てきましたし、生活の場も二拠点に増やす人が出てきています。この先の未来としては、この図の右上の方、つまり働く場所も住む場所も自由、ということが選択できる社会になっていくと良いのではないでしょうか。

Living Anywhereは、まさに文字通り「どこででも好きなように暮らせる」という、いずれ来るであろう社会(図の右上方向)がもっと早く来るようにするにはどうすればよいかを考え、自ら実践する人を増やしていくことを目的として活動するプロジェクトです(一般社団法人)。

今はまず最初の段階として、そのような未来の片鱗を一足早く疑似体験するイベントを開催しながら、それが実現すると暮らし方や働き方がどう変わるのか、それに向けて何が課題になってくるのかを参加者とともに考えています。

例えば昨年の夏に北海道の廃校を借りて、そこを臨時のコワーキング&コリビングの場所にして、約100人の互いに異なるバックグラウンドを持つ人や家族が暮らしてみる、という実験を行いました(我々はこういったイベントを「LA Week」と呼んでいます)。

(Photo by Masahiro Takechi)

平日日中は各自の仕事をリモートワークで行い、夜や休日はお互いに交流したり学び合うイベントを行ったり、近隣でのレジャーを楽しんだりしました。その時の様子はプロジェクトの紹介動画に収められていますが、企業の合宿や家族旅行とはまったく違う体験に誰もが刺激や学びを得ることができました。

雄大な自然を目の前にして仕事をすることで新しい発想に繋がったという人、異業種の人とディスカッションすることで視野が広がったという人、連れてきた子どもの世話を参加者たちが代わる代わる行ったので普段より生活が楽だったという人など。

人々のつながりが学びや協業を生みコミュニティを育てる

一方で、これまであまり意識していなかった課題も見えてきました。その一つは、現代の大都市に暮らす我々が、あまりに機械化と分業化に慣れきった消費者になってしまっていることです。

お金さえあれば何でも手に入る便利な環境を当たり前だと思っていると、いつの間にか知識やスキルが狭まってしまい、「Excelは使えるけど料理はできない。コンビニがあるからいい」というように、身の回りのことですら誰かにやってもらわないとままならなくなります。そういったことも我々を特定の場所から動けなくしている一因ではないでしょうか。

これからの新しい技術やサービスは、この問題を解決することにも寄与するべきだと思い、Living Anywhere の活動の中でも積極的に試していきます。前述の北海道のイベントでは、デジタル技術で木材を加工できる道具を使い、作業机などの必要な家具をその場で作るということにも取り組みました。やがてはこういうことからも新しい職業や事業が生まれていくのではないかと思っています。

(Photo by Masahiro Takechi)

人々が自由に場所を移して暮らすようになると、行く先々の地域の人とも交流が生まれます。先日は福島会津地域の施設で「LA Week」を行いました。そこでは地元の職人さんの技術を学んだり、豊かな食材や食文化について教えていただいたりしましたし、最終日には近隣住民の方々とパーティーを開いて交流しました。

今後は参加者たちの多彩な知識・スキルで地元に貢献する機会も作っていきたいと考えています。好きなときに好きな場所に暮らすということは、各地の気候や自然環境ももちろん大きなポイントですが、実はその瞬間にその場所に集まる人の組み合わせから生まれる学びや協業の効果、その組み合わせが日々変わっていくことによって効果が拡大していき、地域を超えたコミュニティに育っていくことが未来の新しい社会の一つのあり方なのではないかと思っています。

(Photo by Masahiro Takechi)

実際に多くの人々が日常的に「Living Anywhere」になる、すなわち「場所」という制約から開放されて、好きなときに好きなところで暮らしつつ、自分らしく生きていく社会が来るのはまだしばらく先かもしれません。ですが、まず各自が身近なところで一歩踏み出してみることから始まっていくと思いますので、それを後押しするための活動をこれからも行っていきます。

 

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