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「ときどき移働」が、ローカルをより豊かにする〜リモートワークとパラレルワークが実現する地方活性化と自己実現【前編】

Text:江原 政文
編集:トイロハ・ワークス編集部

移働という働き方

移動しながら働く、略して「移働」。僕は、この働き方が直観的に面白いと感じて、2017年7月に「全国ときどき移働協会」を勝手に立ち上げて、活動を始めた。

「移働」とはここ数年のあいだにコワーキング界隈から生まれてきた言葉だと認識しているが、その定義はまだこれからだと思っている。似ている言葉にリモートワークがある。ただし、「移働」と「リモートワーク」は少し違う。活動を始めた頃は全く区別できていなかったが、1年半活動を続けてきて、僕なりにその違いが少し見えてきた気がする。

「移働」は、単に場所を選ばず仕事をするだけではなく、「地方のコミュニティとコミュニティを繋ぎ、地域を越えてお互いより楽しく豊かに生きることを共創する可能性を含んでいる」ということだ。

「ときどき移働」は各地のコミュニティを訪れて交流する活動

さて、僕は勝手に「ときどき」移働をしているわけだが、頻度は1~2か月に1回のペースで、全国の面白そうなコワーキングやゲストハウスなどのコミュニティを訪れている。そこに、少なくとも3~4日程度滞在し、もちろん自分の仕事もするのだが、そのコミュニティに属しつつ、運営者やそこに集まる人たちと交流しつながりを作ることを目的にしている。

ここで大切なポイントは、1日ではなく少なくとも3~4日は滞在することだ。つまり、特に何かを期待するとか要求することなく、そこの暮らしに少し入り込んでみる。そうすることでその地域のことがより分かるし、より多くの人と比較的深い交流ができる。そう、僕の中では、全国各地に「ふるさと」を作っている感覚だ。

では、果たして「移働」にどんな効果があるのか?そしてなぜ「ときどき」なのか?そのことについて、今回、前編、後編の2回に分けて書いてみたい。まず前編では、自分自身の働き方や移働する上で心がけていることなどを綴っておこうと思う。

本業は財務、でもそれだけじゃない働き方

昨今、本業という言い方も意味をなさない様に感じるが、収入の多寡から言えば、本業は企業の財務を請け負う仕事だ。これは、新卒で入社し約10年勤めた会社が会計事務所業界だったからで、その延長で起業したからということもある。

現在は、中小零細企業の非常勤スタッフとして週1回程度訪問して、帳簿の締作業や収支計画の予定実績管理・軌道修正、銀行交渉などの財務に関わることをメインに、労務に関することなども支援している。中小零細企業の課題はお金と人が大部分を占めることは、会計事務所時代リアルに経験していたし、零細企業にとって総務担当者を1名常勤で雇うことは人件費的には重たくなるので、これらの課題を解消する仕事でもあると思っている。

その本業以外には、2016年8月には僕の地元長野県佐久市では初のコワーキングスペースとなるコワーキングiitoco!!をオープンさせた。フリーとして活動し始めて、自分自身がコワーキングがほしかったというもあるし、会社組織とは違った「ゆるいつながり」がほしかったということも開業した理由のひとつだ。開業直前は、人口が10万人を切るような地域でコワーキングが経営として成り立つのか不安はあったが、今ではメンバーも25名ほどとなり、いくつかコラボも生まれている。

長野県佐久初となるコワーキングiitoco!!「夢を実現する場」がコンセプトだ。


その他、日本最大規模の読書会ネットワークであるRead for Antionの公認ファシリテーターとして「変容を促す読書会」を開催したり、ビジネスモデルイノベーション協会ジュニアコンサルタントとしてビジネスモデルキャンバスを使った事業設計のワークショップを開いたりなど、パラレルに仕事をしている。

パラレルに働く効果は、点から線、線から面へと展開していくこと

このようにパラレルに仕事をすると相乗効果も実はある。コワーキングを利用する人たちにとっては、Read for Action読書会やビジネスモデルキャンバスとの相性がすごく良い。

要は、ビジネスをしていればそれなりに課題にぶつかるわけで、たとえば、ビジネスモデルキャンバスに課題を可視化することで対話がしやすくなり、いろんな属性の参加者同士でディスカッションすることによって、新たな視点や知恵を得ることができたり、具体的に仲間の支援が受けられたりもする。もちろん、参加者には初めましての方もいるので、自らの意志で行動している面白い人たちが交差し、新たなつながりが生まれる場所にもなる。

一方で、僕の移働先に、このビジネスモデルキャンバスのワークショップを持ち込ませていただいたこともある。もちろん僕の知り合いはいない。けれども、農業をしている方、介護福祉に関わっている方、管理栄養士として新たなビジネスを生み出そうとしている方、写真家の方、普段はサラリーマンだが地域活動をされている方など、さまざまな業種の皆さんが集まってくれて、ワークショップを通じて面白いコラボレーションが生まれそうな気配を感じたし、その後実際に実行されている。このように横展開することも可能なわけだ。

属性の違う参加者同士が対話をすることで、新しい視点が手に入る。


あるいは、僕は財務関係の専門性を持っているので、フリーランスならば避けては通れない確定申告等についても一般的なアドバイスはできるので、そういった面でも相乗効果があって、結果として本業につながったりもしている。

パラレルに働くことにより、それぞれの仕事の軸にコミュニティが形成され、その仕事の軸ごとのコミュニティが交差する点、つまり「新たなつながり」が現れる。そして、面白いことに、そのつながりから、新たなコトが起きてくるのだ。

ただ、本業でお世話になっているクライアントについて言えば、今のところまだ相乗効果は見いだせていない。しかし、既存の会社組織にも「これからの働き方」は徐々に浸透してくるはずなので、僕がこういったコミュニティを形成することは、きっと将来なにかしらの効果を発揮してくると思っている。

「移働」は自分のライフスタイルを実現するための手段

全国をときどき「移働」していると、本業の仕事やコワーキングスペースの運営をするのが難しいように思われるかもしれないが、実はそんなことはない。

本業については、クラウド化することで極力現地に行かなくても仕事はできる体制にしているし、クライアントにも一定の理解はしていただいている。いざとなればウェブ会議ツールを使ってミーティングもできるし、8時~17時まで決まった時間の中で働くというわけではなく、自分なりのタイムマネジメントの中で仕事ができるようにしているから、リモートワークは十分可能だ。

コワーキングの運営については、これは僕の大切にしていることの一つでもある「コミュニティ性」を大事にすることで解決できている。メンバーになっていただく前に、メンバー同士でコミュニケーションを積極的に取ってほしいこと、もし知らない人が来たら紹介し合うようにしてほしいことなど、お互いの顔や人柄がわかった上で利用してもらえるように、コミュニティとしてのコンセプトをしっかり伝えている。

僕が不在の時のドロップイン対応も、たまにメンバーの方にやってもらったりしていたりもするから有り難い限りだ。つまり、僕がいなければ成立しないコミュニティではなく、いなくてもコミュニティとして成り立っている、と思っている。そういうこともあって、1か月に1週間程度、僕が「移働」で外したとしても、今のところは難なく運営できている。正直、リモートワークしにくい業種もあるかもしれない。けれども、できる方法は意外とあるということはお伝えしておきたい。

ただし、これが一番重要なのだが、リモートワークや「移働」をする前に、自分自身がどんな生き方をしたいのか、そこをしっかり考えることが必要だと僕は思っている。そこさえ決まってしまえば、できる方法を見つけることは可能だ。要は、「移働」もリモートワークも、自分の求めるライフスタイルを実現するための手法、もっと言ってしまえば、生き方そのものだと思っている。

僕の望む生き方と、地元佐久地域への想い

僕の住んでいる地域は、長野県佐久市。人口10万人を切る小都市で、長野県の東に位置し、北は浅間山、南は八ヶ岳、また佐久盆地の中央には千曲川が流れ、自然豊かで農業が盛んな地域だ。

僕自身、この佐久地域で、これから先どう生きていきたいかと考えたとき、昔の良さと現代の良さの「良いところ取り」をして、暮らしをアップデートした生き方をしたいと思っている。それは、現代の便利性に加えて、持続可能性とか循環型社会とか自己実現といったキーワードを実装した生き方だ。

例えば、佐久地方もこれからは人口減に伴って遊休資産が大量に発生する。空き家問題もそうだが、農業の担い手も佐久は平均年齢約70歳ともはや待ったなしの状態で、これを放置すれば農地は荒れてしまう。

ただ、空き家をうまく活用できれば、コリビングやシェアハウスなど、今後増えるであろうリモートワーカーの集まる場になるし、自然豊かでかつ東京から近い環境であることは、ワーケーションやコワーケーション(coworking+vacation)で利用してもらえる可能性はある。

農地については、2019年春から耕作放棄地を使って「コミュニティ農園」を始める予定で動いている。これは佐久の良い文化を後世にも残したいという思いで始めるもので、比較的若い人の暮らしの中に「農」を取り込むことで、ある種セーフティーネットともいえる循環型社会が作れると考えている。

佐久市内山地区。来春コミュニティ農園開設地。新幹線の停車する佐久平駅から車で10分程度で、この様な自然豊かな所に行けるのも佐久の特徴だ。


そして、いまや「個の時代」と言われている。「幸せな人はそうでない人より創造性が3倍高く、生産性も1.3倍高い」という研究結果もあるそう
だが、確かに自分の意志に従って活動している人は、つまり自己実現に向かって活動している人はエネルギッシュで面白い。

地域活性化という視点で見たとき、この面白い人たちが、どれだけその地域にいて、しっかりつながっているかがキーだと僕は思っている。もちろん、地域課題の解決にも有効に働くからだが、地域の外からコワーケーションなどに参加してくれる人は、ここでの面白い出会いや、その出会いから何か「コト」を起したいと思っている人が多いからだ。

僕は、佐久地域が、コワーケーションに参加するような面白い人達に立ち寄ってもらえる場所にしたいと思っているし、僕の運営するコワーキングの大切にすることは「夢を実現する」なので、佐久地域に面白いプレーヤーが生まれたり、コラボが生まれるようにしていきたいと思っている。それが佐久のこれからのためになると思っているからだ。

そういえば、ちょうど僕が「移働」を始めたころ、「関係人口」という言葉も使われだして、もしかしたら自分の望む生き方の実現や、佐久地域を一緒に盛り上げてくれる「関係人口」を増やしたいという思いがどこかにあって、何かつかもうとして、ときどき「移働」を始めたのかもしれないと、改めて思うところでもある。

そんな思いから実際に「移働」し始めてみたわけだが、予想以上に面白い出会いや体験が待ち受けていてくれた。やはり、「移働」はこれからの地方で豊かに暮らすために一定の効果をもたらしてくれると思う。その移働での体験や、感じたこと、その中から見えはじめてきた効果については、後編にて詳しく紹介していこうと思う。

【後編】へ続く。

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