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「ときどき移働」が、ローカルをより豊かにする〜リモートワークとパラレルワークが実現する地方活性化と自己実現【後編】

Text:江原 政文
編集:トイロハ・ワークス編集部

【前編】より続く。

移動しながら働く、略して「移働」。前編では、その活動内容と僕自身の働き方について書かせていただいた。

この後編では、全国を移働する中での体験や、その体験から感じたことなど、具体的な出来事を紹介しながら、「移働は地方のコミュニティとコミュニティを繋ぎ、地域を越えてお互いより楽しく豊かに生きることを共創する可能性を含んでいる」ことについて迫っていきたいと思う。

「移働」先から学んだこと

「移働」を始めて、そろそろ1年半が経過する。訪れたところを振り返ってみると、東京世田谷、千葉佐倉、兵庫神戸、岐阜高山、新潟十日町、徳島美馬、京都綾部、福井高浜、大阪豊能、北海道帯広、の10か所だ。規模も町のコンセプトも方向性もバラバラだが、そこに面白そうな人がいると聞いては出かけていって、その行った先で次の面白そうな場所を教えてもらってまたそこへ行く、ということを繰り返した結果だ。

この「移働」の中で感じたのは、どの地方にも自らの意志で動くプレイヤーがいて、地域に根差した面白いことをやっている、ということだ。そこで、ふと気づいたことがある。地方と地方は競合しないということだ。

言い換えると、他の地方でやっていることを(もちろん、あらかじめ了解を得て)パクって自分の地方でやると、それは競合ではなく「共創」の関係性になれるということだ。そしてその結果、地域を超えたコミュニティが形成される。この気づきを、実際に訪れた移働先の体験から共有したい。

新潟県十日町市「ギルドハウス十日町」

新潟県十日町市。人口約5万人の小都市だが、その山あいの限界集落に「ギルドハウス十日町」という古民家を再生したコミュニティがある。その集落には数軒しか家がないにも関かかわらず、約3年前のオープンから数えて、なんと約7,000人もの冒険者が訪れているのだ。(※冒険者≒旅人のこと。ギルドハウスは旅人のことを某ロールプレイングゲームになぞって冒険者と呼んでいる)

ギルドハウス十日町

ギルドハウスは、古民家をゲストハウスやシェアハウスの様に商業的に再生させるのではく、あくまでも「住まい」として再生し、オーナーである西村治久さんが「住み開いて」いる場所のことだ。

6年前に会社を辞めた西村さんが、全国のコワーキングスペースを巡り、さまざまな人との出会いの中でどうしたら「持続可能な生き方」ができるかを考えて形にしたのがギルドハウスだ。ここは、共に住みながら、お金を介さずいろんな人が訪れて滞在し、いろんな価値観を交換して何かが生まれる場所になっている。

2017年10月、ギルドハウス十日町を「移働」で訪れた僕は、ここの「まちかどギルド」という、冒険者が気軽に旅ができるようなシステムを知り、今では僕の運営するコワーキング「iitoco!!」にも実装させてもらっている。

そして、今度は20188月に、西村さんが僕の地元である長野県佐久市に約1週間にわたって「移働」してきてくれた。これこそが、「移働」の良さだ。せっかくなので、佐久のコミュニティのメンバーとつながってほしいという思いを込めて、西村さんを切り口に、いくつかイベント化した。そのイベントの中でも、一番集まったイベントが “セントラルの消滅とローカルに生きること”だった。

このイベントは、「iitoco!!」と、今年1月に古民家を再生させてオープンにした『ゲストハウス&シェアハウス柏屋旅館』、信州古民家再生プロジェクト、通称『コミサイ』という、古民家を切り口にさまざまなイベントを開催し多くの人を集めるコミュニティの3団体で共同主催した。いずれの団体も佐久地域を中心に20代~30代の若い世代で運営する団体だ。

「セントラルの消滅とローカルにいきること」イベント風景


タイトルこそ少し過激にしたが、内容は西村さんがギルドハウス十日町をどのように立ち上げたか、そのコンセプト、そして今後の展開などについてお話していただき、その後は参加者での交流会という名の飲み会をするイベントだ。

ギルドハウス十日町というと、ゲストハウスを運営している人や、古民家を何かしら再生して活用している人たちには全国的につとに有名で、佐久地域に関わらず、さまざまな地域から人が集まり、ローカルで行うイベントとしては大変な賑わいを見せた。

古民家の活用を考えていた参加者からは、後日、「ギルドハウスのようなことを始めます!」といったメッセージまでいただくことができた。これもひとえに西村さんのチカラのおかげなのだが、このコンセプトに共感した人たちが、全国各地にそれぞれの特徴を活かしたギルドハウスを開いていけば、ある意味地域を超えたコミュニティが形成されていくはずだ。

実は、このイベントの後も、ギルドハウスの住人・元住人が佐久を訪問する、逆に佐久の人たちがギルドハウスに訪問するという交流が起きており、イベントを一緒に企画した「コミサイ」では、来年メンバーを集めて「ギルドハウス十日町を訪れる企画を考えるイベント」を予定していたりと、まだまだ、つながりが広がっていく勢いだ。これこそまさに、地域を超えた共創だと思っていて、「移働」の産物だと思っている。

今回のように、僕と西村さんの個と個の関係性から、コミュニティとコミュニティの繋がりに自動的に発展させていくために、「移働」して来てくれた人を中軸にイベントを催すのは有効だ。西村さんをはじめ「移働」する人は、技術を持っていたり、面白い考えやネタを持っている人が多いから、イベントに参加する人にとっても有意義な時間になるし、何より「移働」者は繋がりを求めてきているからwin-winになれる。

大阪府豊能町「サトヤマベース~ハナビ~」

大阪梅田駅から北に電車で約50分。ここは本当に大阪なのか?と思えるほどの里山がある。大阪府豊能町、人口2万人程度の小さな町だ。この里山に「サトヤマベース~ハナビ~」という古民家を再生させたシェアハウスがある。

ここは鶴田勇気さんという方が、2018年6月からスタートさせたコミュニティだ。そしてこの「ハナビ」は単なるシェアハウスではなく、その根底にあるのは「里山×定額シェア生活×小商い」で、里山の資源を活かした「定額シェア生活」により生活コストを落とし、その分浮いた資金で、自分の好きなことや個性を仕事に変える挑戦を支援している(変化の激しい鶴田さんだから、新たな意味づけが増えているかもしれないが)。僕は2018年10月に「移働」で訪問したが、梅田駅から通勤圏内という立地も魅力的で、多くの人の行き来があるコミュニティになっていた。

大阪梅田から電車で約50分のところに、こんなに自然豊かな里山が。


鶴田さんとのつながりは神戸に「移働」した際に出会い、その半年後の
6月上旬、僕が主催した佐久でのコワーケーションに参加してくれたところから始まる。コワーケーション期間を含む2週間、前述の「柏屋旅館」に滞在していたわけだが、ちょうど、鶴田さんも豊能町でのシェアハウス構想を練っていた時期だったのもあってか、良い意味で柏屋旅館に刺激を受け、練っていた構想を一気に実行した。数週間後の6月下旬には物件を決め、シェアハウスをスタートさせるという相当な熱量を持った人だ。佐久に滞在する間も、いろいろなイベントを企画させてもらったが、佐久の活動家にも火をつけていってくれた。

構想中だったシェアハウス計画を、佐久の仲間にプレゼンしてもらう。イベント化は面白い。


前編で紹介した、僕の仕事のひとつの軸であるビジネスモデルキャンバスを使ったワークショップを持ち込ませてもらったのは、実はこちらの鶴田さんのコミュニティであり、その後、その場に参加していた農家さんとハナビのコミュニティで農に関するイベントが行われていたり、写真家さんがしばらくハナビに住み着いて紹介動画を製作したりと、具体的なコラボレーションがスタートしている。その他にも、さまざまな活動を鶴田さんは実行されていて、書き始めればかなりのボリュームになってしまいそうなので、「ハナビ」のリンクを参照していただくか、またの機会に紹介させていただこうと思う。

鶴田さんのコミュニティとの関係は始まったばかりだが、これから先、大阪豊能でうまくいったことを佐久で実行してみるのもよいと思っているし、その逆も然りだと思っている。一つ例をあげれば、僕が2019年春から佐久で開くコミュニティ農園は、環境も似ていることが多いのでシェアできることが多いと考えている。このように共創することで、お互いより良い活動になっていくだろうし、相互に行き来しながら、ある意味プレイヤーとして実働したり情報交換することも可能だ。

ところで、「移働」しながら感じていることだが、「移働」で知り合った人たちには、シェアの概念、つまり分かち合い共創することで、お互いがより豊かになるという感覚を持っている人が多いような気がする。「移働」を通じてまず人と人とのお付き合いからはじまり、共創の関係性、つまり仲間であることが大前提にあるからこそ、惜しみなく分かち合うことができると思っている。

ハナビのコミュニティスペース。頻繁に訪問者と食を囲み、交流がされている。


「移働」をすることでコミュニティがつながり、ローカルも豊かになる

ギルドハウス十日町、サトヤマベース~ハナビ~。どちらの体験にも共通して言えることは、「移働」を通じてコミュニティとコミュニティをつなぐということは、地域を超えた共創関係をつくり、地域を超えたコミュニティが形成されていくということだ。

そして、このコミュニティのつながりを通じて、ある意味各自で好き勝手に行き来する人が出て来れば、もっと大きなうねりになり、これから人口が減少していくローカルでより豊かに生きていくための一つの処方箋になるのではないかと思っている。

やや話はそれるが、この活動は人生のリスクヘッジも兼ねていると少し思っている。日本は災害が多い。「移働」を通じて全国に自分の「ふるさと」を作っておくことは、自分自身のセーフティネットにもなる。

今回の2か所の体験以外にも、「移働」を通じたさまざまな出会いがあり、地域を超えた共創関係の土壌がより広がって来ている。1年半前に移働し始めていなかったら、まずこのような楽しい出会いはなかっただろうし、こうやって未来にワクワクすることもなかったかもしれない。だからこそ、とりあえず「移働」してみてよかったと思っているし、この先の未来が楽しみだ。

帯広の牧場での移働ショット。広くて気持ちがいい。実際書き物や企画ものには向く仕事環境だ。


最後に、なぜ「ときどき」移働なのか?

最後に、なぜ「ときどき」移働なのか、に答えよう。

それは単純に僕が生まれ育った佐久地域が好きだからだ。あくまでもホームは佐久地域。だから、自分の生き方を表現して「ときどき」移働と謳っている。

そして、僕にとっての「移働」は、各地の価値観が共有できるコミュニティと佐久地域をつなぐものになってきている。これは、世界を転々と働くノマドワーカーのようなライフスタイルだとか、一つの会社に勤めあげるライフスタイルだとかを否定しているわけでは全然なくて、僕には「ときどき移働」が合っているというだけの話だ。

働き方の選択肢はものすごい増えてきている。あなたも、あなたが実現したいライフスタイルに合わせて、ぜひ働き方をカスタマイズしてみたらいかがだろうか?きっとより楽しく豊かな人生になるはずだ。

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