1. HOME
  2. ブログ
  3. 中小企業こそ導入すべきリモートワーク、その理由とは?

中小企業こそ導入すべきリモートワーク、その理由とは?

Text:平野匡城
編集:トイロハ・ワークス編集部

日本のリモートワーク導入の実情

ここ数年、政府が働き方改革の名の下でリモートワークを推し進めている流れがあります。ただ、働き方改革で取り上げられているリモートワークは、企業が社員を会社にいるのと同じように働けるようにする仕組みの色合いが強く、リモートワークが持つ可能性の一部分でしかありません。

大企業がリモートワークを導入している一番の理由は、人材確保のためです。優秀な人材が家事都合で辞めるのを防ぎたいということと、多様な働き方ができることをアピールして若い人材を確保したいという点です。そのため、仕事をする場所はどこもでもいいが、その仕事自体には変化がないことが前提となっています。

ちなみに、企業のリモートワークの導入はやっと大企業が始め出した段階で、国内の97%を占める中小企業に関してはまだまだであり、実際の導入率は4.6%に過ぎません。(*1)ですが僕は、中小企業こそリモートワークを活かせば、日本にもっと多様なビジネスが生まれる可能性があると考えています。

というのも、これからの社会はICTの進化により、場所にとらわれない自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能となることで、自分の能力と人的ネットワークを活かしてビジネスを行う「自分の経済圏」を構築しながら働くようになるのが明らかであり、そのような人々が働く環境としてリモートワークが活用されているからです。

この流れは海外の状況などを見ても今後避けられそうにありません。例えばアメリカでは、1億6千万人の労働力人口のうち5,730万人が既にフリーランス化しており、2027年にはフリーランス人口が過半数になるという予測が出ています。(*2)

一方、日本のフリーランス人口は1,000万人(*2)ほどで、日本の労働人口が約6500万人とすると6人に1人はフリーランスということになります。(*2)この数字には副業として従事している数も含まれているので、フルタイムでフリーランスの人は若干少ないと思われすが、それにしても日本でも無視できない割合を占めるようになってきています。

日本では特に、2011年の東日本大震災を境に自分の生き方を見つめ直し、自分の経済圏を持ってビジネスを行う人が増えてきたこともその一因になっていると感じています。

また、IT化により場所に依存しない仕事が可能になり、フリーランスのネットワークも構築されやすくなりました。特に腕に自信のある技術者がフリーランサーには多く、その様な人々が集まってスタートアップ企業が生まれる傾向も顕著です。今でこそ「コワーキング」という言葉は一般的になっていますが、これが広まった背景には、こういった人々の受け入れ皿となったことがあると思います。

彼らがビジネスを進めるためには個々人の限界を解決することが必要で、そのためにネットワークを活用したリモートワークが活用されて来ました。このリモートワークの「場所に依存せずに働ける仕組み」に国や大手企業が着目し、ここ最近、テレワークと称した多様な働き方を受け入れる手段として本格的導入につながっています。

そしてここがポイントなのですが、これからの中小企業においては、大企業のやり方を単に真似するのではなく、中小企業ならではの小回りの効く特性を活かしたリモートワークの導入が考えられます。

*1:「IDC Japan株式会社 国内テレワーク導入率 産業分野別予測 2018/7/3」より
*2:「フリーランス白書−2018(厚生労働省)」より

中小企業にとってリモートワークが有効な理由

●中小企業の現状

現在の中小企業の課題は「事業承継」と「人手不足」です。僕たち中小企業診断士もこの課題は優先的に取り組むべきだと感じています。事業承継は経営者の高齢化に対して、事業を継続させるためにどうするかという話で、企業からの相談事としても最近多くなってきています。これと合わせて問題なのが人手不足です。特に新卒の就職市場は完全な売り手市場で、大企業でも採用に苦労しており、中小企業に来る人は更に少なくなっています。

これはまだまだ日本の学生が安定志向を目指しているからかもしれません。経済状況は良くなっていますが人がいないため、「仕事はあるのに休業」という話もちらほら聞こえて来ています。(*3)

この様な状況であるため、現業を今いる人員でなんとか頑張ってこなしているという企業が大半であり、その忙しい状況を解決するために、国のIT補助金制度(*4)の後押しもあって、少しずつですが中小企業のIT化による労働生産性向上が進み始めています。

では、リモートワークを導入することは労働生産性向上につながるから有効なのでしょうか?その面もありますが、僕は知的資産の向上に寄与する面が大きいと感じています。

*3:東京商工リサーチがまとめた2018年9月の「人手不足」関連の倒産は前年比22.7%増
*4:2018年度は2017年度の5倍にあたる500億円の予算を確保

●人材確保のために

2018年の中小企業白書では、第2部として多くのページを人手不足解消と労働生産性向上に対する取り組みに割いています。この中では、約7割の企業が「労働人材が不足している」と感じており、この対策として、「賃上げ等の労働条件改善による採用強化」や「多様な人材の活用」としています。ここでの「多様な人材」は女性と老人、外国人労働者を指しています。


(※画像 2018年度版中小企業白書より)

リモートワークを活用することで、まず、せっかく採用した人材の流出を防ぐことが可能になります。また、産休や介護といった個々の社員のニーズに対応することで労働力不足を解消することにも有効です。僕の知人の会社でも、社員4名のうち2名が産休に入り危機的状況を迎えたことがありました。

リモートワークを活用することのもう一つの意義は優秀な人材が集まる会社づくりが可能ということです。中小企業は優秀な人材を確保しづらくなっているのが現実です。なぜなら、同じ労働条件であれば若者は大企業に就職してしまうからです。

しかし、リモートワークで仕事をしたいと考える人は自分で主体的にビジネスをしたいと考えている場合が多いです。その様な人なら、リモートワークを導入していることが理由であなたの会社を就職先に選ぶ機会も増えます。ただし、リモートワーク志向の社員を会社に定着させるための仕組み作りも必要なのは言うまでもありません。

また、中長期的視点に立って「事業承継」を行う時に「価値のある会社」となるための効果も生まれます。リモートワークの活用で企業の強みになる知的資産の要素として重要な、人的資産、関係資産(要するに会社に協力してくれる外部のネットワーク)を結びつけることが可能になるからです。

先般出版された、『本社は田舎に限る』で紹介されたサイファー・テック社は、実際にリモートワークを積極的に導入して人手不足を解消した企業の好例と言えます。

ITベンチャー企業である同社は、長らく人手不足の状態が続いていましたが、とあるきっかけで本社を東京から徳島県美波町に移しリモートワークを実践した結果、人手不足が解消されたうえに地域社会にも溶け込み、地域創生ビジネスにつながり逆に日本全国へ進出しました。仕事のために遊びを諦める必要はないという発想から、「半X半IT」という従業員のライフスタイルを尊重した環境を提供したのが成功の要因です。

この様に、今までの常識に囚われず、働き方を変えても現在の事業を継続することは可能であり、事業自体が発展する可能性も大いにあります。

●イノベーションを起こすために

よく「モノ」から「コト」への移行と言われるように、多様で細かい顧客の要求に応えていくことが他者との差別化につながります。そのために、提供するサービスをニーズに応じてアップデートすることや、時には全く新しいサービスに変化させることが求められますが、そのためにはイノベーション(*5)を起こす必要があります。

今まではイノベーションを起こすために、自分の会社の中で時間をかけて育てた人材や、既存のネットワークを活用して対応する自前主義が当たり前でした。しかしITの発達により世界との距離感が狭くなったことでイノベーションのスピード自体が早くなり、よほど強みがある研究開発体制がない限り自前主義で対応していくことが難しくなりました。自前主義は大手企業ですらすでに限界に達して来ています。そこで活用したいのが、「オープンイノベーション」です。

「オープンイノベーション」とは外部に存在するアイデアを内部での活用することと、内部で活用されていないアイデアを外部で活用することで新しい価値を創造することと言われています。オープンイノベーションでは自社のビジョンを達成するために必要な「人的資産」や「関係資産」を外部と連携して調達します。

連携先としては、自社と同じ事業志向性のある他の中小企業や、先鋭的な技術を持ったスタートアップ、あるいは人材が考えられますが、その場合、彼らとパートナーシップを結んで必要な技術やノウハウ、市場をシェアすることが大切です。このオープンイノベーションを進めるにあたってリモートワークを利用するのも一考です。

リモートワークの素晴らしいところは、自者・他者関わらず多様な人と人とのコミュニケーションが実現できるところにあります。「オープン」という言葉が示す通り、会社自体が外に開きコミュニケーションを行う中でイノベーションを起こすためにも、リモートワークの活用を検討すべきだと考えます。

なお、オープンイノベーションには「場」が重要です。閉じた会社の中では新しい発想はなかなか生まれません。オープンな発想で新しいことをイメージするためのには開放的な空間が必要です。

そして、その様な「場」としてコワーキングスペースの活用をお勧めしたいと思います。なぜなら、コワーキングスペースには多様性にあふれた人が集まって来ており、こうした人々は自分経済圏を持っている場合が多いので、あなたの企業のネットワークをさらに広げられる可能性が上がるからです。彼らと連携することで素早くイノベーションを起こすことができると考えられます。

※5:イノベーションとは、新しいものを生産する、あるいは既存のものを新しい方法で生産すること

起業、創業もリモートワークで

これからは会社に属さずに個人でビジネスをする人が増えるのは間違いありません。そういう時代に、中小企業は彼らと連携して、お互いの経済圏同士をリンクさせることが大切になります。

また、終身雇用前提ではなく、その時その時の会社が取り組んでいるプロジェクトの目的に合わせて柔軟に規模や人材の出入りを調整することで、環境の変化に機敏に対応できるビジネス体質も構築できます。加えて、経営資源の乏しい中小企業にとってリモートワークを活用することで、さらなる価値を生み出し第二創業(*6)となる可能性も出てきます。

また、もしあなたが起業(創業)しようとしているのであれば、ぜひリモートワークを活用して始めることを検討してみてはどうでしょう。最初から「人的資産」や「関係資産」を他者と連携することで事業領域を広げ、自分経済圏を拡張することを目的とするならば、リモートワークはまさにうってつけと言えます。

ところで、企業としてどうやってリモートワークを活用したいかと悩んだら、中小企業診断士に相談してみるのもいいかもしれません。どうぞお気軽にお問い合わせください。

*6:業態を変更したり新たに別の事業に進出することを指す

 

関連記事

おすすめ記事

最新の記事