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すべての場所をコワーキングスペースに〜複数のコワーキングとコミュニティを周遊する

Text:中尾将志
編集:トイロハ・ワークス編集部

出かけ先のコワーキングをハシゴする日常

とある木曜日の昼。新幹線を降りて蒲田のクライアント先へ向かうのだが、その前に富士通PLYへ立ち寄るのがいつものパターンだ。PLYは富士通が自社内につくったコワーキングスペースやファブスペースで構成される共創実践の場だ。入館手続き不要で利用可能なので以前から重宝している。すっかり馴染みとなった私は、スタッフの方に挨拶しながらテーブルタップを借り、雑談しながらメールチェックをする。参加できなかったセミナーの情報をもらったり、イベントの企み話をしたりで、あっという間にクライアントとの約束時間になる。

打合せを終えて、次に大手町の3x3Lab Futureに立ち寄る。三菱地所の所有する施設をエコッツェリア協会がビジネスワーカーのためのサードプレイスとして運営するコワーキングスペースだ。ウッディな内装と観葉植物のある心地良い空間で、さらに気に入ってるのはガラス張りになっていて街路を借景できているところ。内部空間以上に広く明るい雰囲気になるのだ。

個人会員となって数年、何かと人脈が広がるのはこの明るさも大きな力になっているだろう。私はここでは作業よりも雑談や議論を優先する。いつも顔馴染みの会員さんがいるし、会員さんから「面白い人がいるよ」と紹介してもらうことも多い。コミュニティマネージャーからの紹介も嬉しいが、顔馴染みからの紹介はもっと嬉しい。行きつけのバーや喫茶店だと客同士が仲良くしてたりするが、そんな感じだ。

そこから徒歩10分もかからずに丸ノ内のWeWorkへ。アメリカ生まれのコワーキングスペースWeWorkは、色んな企業の人が利用している。私が利用している他のコワーキングスペースでは、仕事場のひとつとして使っている人が多いが、WeWorkの場合、メインオフィスにしている人が多いせいか少し雰囲気が違う。今日はここで、プレミアムビールを楽しみながらの座談会を開催させて頂く。WeWorkで仕事されている方だけでなく、WeWorkに来てみたいという方にも、ちょっとしたイベントを開催させてもらえば、お互いをおつなぎできるし、新たな人脈もできる。

翌金曜日は、築地で友人と待ち合わせて朝食。半年に一度は食べながら情報交換し、議論し、ブレストしている。蕎麦屋で、ベトナム料理屋で、パンケーキ屋で。カフェやコワーキングスペースだけがサードプレイスではない。テーマは教育についてだが、個人事業主のこの人からは、毎回、刺激を受けるし、受けた刺激の分はお返しに情報を提供したいと思っている。

夕方少し前に京都で途中下車。先日知り合った働き方推進をされている方と、ワコールスタディホール京都の喫茶スペースでお話させて頂く。京都駅近くという好立地で、展示イベントがあり、展示に合わせた本が楽しい。待ち合わせするには、待ち時間が長くても苦にならないところがいい。

移動してImpact Hub Kyotoでイベントに参加。このコワーキングスペースは、一面の壁が本棚になっているのがお気に入りだ。ビジネス書や自己啓発書などもあるが、小説もたくさんあって見ているだけでも楽しい。イベントのテーマで、本棚を眺めていても浮かび上がってくるタイトルは変わる。こうして、クライアントとの打合せの合間やイベントへの参加の合間に、行く先々のコワーキングスペースなどを最大利用させてもらっている。

仕事によって場所を選び、コミュニティで多様性を身にまとう

私は、関西でも田舎の方に住んでいるが、結構な頻度で東京へ出張するし、関西においても所属先である大阪だけでなく京都や神戸を行動範囲にしている。移動が多いので、移動先で作業したり交流できる場所を周遊していて、自社事務所も周遊先のひとつと思っている。

仕事して移動しているのか、移動の合間に仕事をしているのか、時に分からなくもなるが、今は一ヶ所で落ち着いて作業をすることが出来ない体質になってしまった。かつては移動先で作業できるところを探していたのが、今は逆に、仕事内容によって作業場所を変えるようになった。

集中してテキストに起こしたり資料を作るのは在宅ワーク。調べ物や整理事は、カフェや馴染みの人がいないコワーキングスペース。発想を拡げたい時は、馴染みの人がいるコワーキングで対話に付き合ってもらう。それぞれの場所で最適な仕事にスイッチが入るようだ。スポーツに適した空間があるように、仕事もその内容に応じて適した空間があるのではないだろうか。

移動が多い一方で、これまで縁があって、固いものから柔らかいものまで、いろんなコミュニティに参加させてもらっていて、そのコミュニティがベースとしている場にも周遊させてもらっている。

ビジネスのトレンドを学び合うコミュニティ、サービスデザイン手法を学ぶコミュニティ、教育の方法論を学んだり実践し合うコミュニティ、新たな事業の種を緩く議論するコミュニティなど、ビジネスに関係するもの。カラオケの定例会、泡盛の味わいを楽しむコミュニティ、銭湯を学び語るコミュニティなど、趣味や楽しみをベースとしたもの。小学生の子を持つ父親同士のコミュニティ、学童野球関係者のコミュニティなど、地域に根付いたもの。

それぞれのコミュニティは、その活動の拠点とする場をもっていて、その場に行くと自然とそのコミュニティの色合いにスイッチが入る。カラオケをひたすら楽しむスイッチ、ビジネス事例を具体的に思い浮かべ抽象的なビジネスモデルを議論するスイッチ、効果の高い教育を実現する組織デザインを考えるスイッチ。それぞれで身につけたスイッチは、自分の知識として蓄積できることもあるし、そのコミュニティに属する人の思考パターンを自分の抽斗に入れることもある。「あの人ならこう考えるだろうな」という風に。

抽象的に考えるよりも実在の人物を頭に描く方が、具体的で詳細な台詞として出てくるものだ。私にはデザイン経験はないが、コミュニティで知り合ったデザイナーの友人が語ってくれた言葉が頭の中の抽斗に入っている。地域密着型の個人事業主の経験もないが、銭湯経営者と飲んだ時の会話が頭の中の抽斗に入っている。

父親同士のコミュニティで親子キャンプに行けば、不規則行動や発言でまとまらない子ども達をまとめながら楽しむための話術や態度が、仕事で使うワークショップ運営のスキル強化になる。父親同士というのは職種も多種多様で、びっくりするほど仕事の組み立て方や使う言葉も違う。そういった父親仲間でキャンプでも釣りでも物作り体験でも、イベントを企画実施していくことで、新しいクライアントとのプロジェクトにおいて、自分の価値観だけに偏らないチームビルディングができるようになってきている。

父親友達と飲みながら育児の苦労や悩みの話をすると、自由奔放な子どもとの接し方、内にこもりすぎる子どもとの接し方を教えてくれて、職場やクライアントとのコミュニケーションにおけるヒントになる。地域活動のコミュニティで知り合った介護事業者の方や医療関係者の方に、個別にヒアリングや見学をさせて頂いて、現場の実情を把握することで、クライアントと検討しているサービスニーズがあるかどうかの検証に役立ったこともある。銭湯経営者との話をもとに、高齢者の行動特性を教えてもらい、きめ細かいサービスを検討するための要件にしたこともある。

こうして、複数のコミュニティに属することで抽斗が多くなるだけでなく、実際に仕事に役立っていることを実感する。

ただ知識として学ぶだけではなく、実際に経験することで、さまざまな物の考え方や観点を身につけられる。多様性が重んじられるのはそれが理由だろう。その多様性を育むには、10ぐらいの異なるコミュニティに所属するのがいいのではないだろうか。コミュニティというと何を以ってコミュニティなのか、という声も聞こえてきそうだが、10ぐらいの異なるスペースを巡回すれば、多様性を身にまとうことができるのではないかと思う。

更に、相手の価値観を大事にしたコミュニケーションをとるためにも、複数の異なるコミュニティに属するのがいい。ある特定の組織内では、専門用語が通用し、会話の背景も暗黙に了解されるので、言葉少なく認識の共有が進んでいく。同僚だけで通じる言い回しやニュアンスはどこにでもあるもので、自然に発達した効率的なコミュニケーションだ。残念なことに、ここに組織外の価値観を持ち込んで多様性を求めると、この効率性が邪魔をしてしまう。だからといって、組織内の効率性を否定すると、普段の組織活動の生産性が損なわれる。

ところが、複数の異なるコミュニティに属しておくと、専門用語やローカル用語、固有の言い回しがどれなのかを意識しやすいし、一般用語に変換できる。海外旅行に行くことで日本の風土や文化を意識できるようなものだ。なるべく異なる風土文化に旅する方が自分の風土文化を意識できるように、複数の異なるコミュニティに属する方が、多様なコミュニケーションができるようになるだろう。

すべての場所をコワーキングスペースに

今や、カフェやハンバーガーショップやレストランで仕事をしている人は普通に見かける。新幹線は当り前の仕事場になっているし、駅や公園で仕事している人も違和感がない。思考は場所を選ばないのだから、どんなところでも仕事場になるのではないだろうか。そう思って試しに銭湯で少し仕事をしてみたことがある。デイケアでも机を借りて仕事をしてみたことがある。特に困ることはない。

電源、WiFiがあればPCやタブレットやスマホで仕事できる。電源がなくても、机と椅子があれば、手帳に考えをまとめることができる。単なる作業場なら在宅ワークすればいい。私にとって、コワーキングスペースとして重要なのは電源よりもその雰囲気と多様な話を聞かせて貰う相手、そして思考の発散や収束を助けてくれる対話相手がいるということだ。

そう考えると、まだコワーキングスペースとして使ったことのない場所ばかりじゃないか。まだまだ身にまとっていない多様性がいたるところに満ちている。もっと多様に、もっと発想を拡げ、もっと楽しく仕事ができるんだと思うとわくわくしてくる。すべての場所をコワーキングスペースにしよう。

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