1. HOME
  2. ブログ
  3. ひきこもりながら働き続ける日本初の株式会社「めちゃコマ」が実現する在宅勤務マネジメント(Part.1)

ひきこもりながら働き続ける日本初の株式会社「めちゃコマ」が実現する在宅勤務マネジメント(Part.1)

Text:佐藤 啓
編集:トイロハ・ワークス編集部

「社長、お話があります」

社長なんて仕事をしていると、色々な場面に遭遇します。中でも、部下やスタッフからこの言葉を聞くのが、一番胃が痛い。特に具体的な業務内容や案件に触れず、単に「お話があります」というときは、経験上、90%くらいは「よくない話」、さらにその中でも「退職を考えています」ということがほとんどと個人的には思っています。

辞めてほしい社員なんて、基本的にはいないわけですから、さて、どうしたものかと考えるわけですが、これがひきこもり歴10年の人が、ふとしたきっかけで私と一緒に働くようになり、仕事の進め方や心構えをいろいろ教え、いつしか仕事もきっちりできる「頼れるスタッフ」になっていき、今後はどんな風に成長するかな、本人も「もう、自分はひきこもり『当事者』ではなく『経験者』だと思います」なんて言っているしな…と楽しみに考えている途上で、ある日「青天の霹靂」的な感じで「社長、お話があります」が来たら、残念を通り越して、後悔しか残らないわけです。

「後悔先に立たず」とはよく言ったもので、マネジメントの要諦の一つは「先回り」だと思いますが、ひきこもり当事者主体の会社を日本で初めて立ち上げて間もなく一年、「ひきこもりながら働こう」なんて、なんだか就職支援会社のキャッチコピーに出てきそうなフレーズを天下のNHKに出してもらったりもしながら、ひきこもり当事者・経験者が働きやすいと思える環境を作ってきました。このノウハウは、ひきこもり支援に限らず、在宅勤務・テレワークを行う上で、スタッフ側にもマネジメント側にも何かしら役立つのではないかと思い、今回、寄稿しました。

日本初の「ひきこもり当事者・経験者主体の株式会社」設立

申し遅れました。株式会社ウチらめっちゃ細かいんで、通称「めちゃコマ」の代表をしております、佐藤と申します。

めちゃコマは、2017年12月設立の、日本で初めての「ひきこもり当事者・経験者主体の株式会社」です。ひきこもり当事者が中心のNPOはこれまでもいくつか存在していたのですが、営利組織である株式会社では日本で初めてということで、おかげさまでNHKや日経新聞、Yahooニュース、週刊ダイヤモンドなど、色々なメディアにも取り上げていただきました。

なぜこんなふざけた名前の会社を、しかも「ひきこもり当事者・経験者主体」で作ろうと思ったかというと、直接的には私自身のいとこにひきこもり当事者が2名いることもあるのですが、私自身は元々ITのバックグラウンドで、某メーカーでエンジニア等の経験を10年ちょっと積んだのちに、独立して社会人向けIT/ビジネス系教育を主な事業とするフロンティアリンク株式会社を2006年に創業し、現在はフロンティアリンクの代表も兼務していることも理由にあります。

フロンティアリンクでは、教育を提供する上で必要な双方向型のEラーニングシステムをすべて内製で作っているのですが、ご存知の通りIT業界は猛烈な人手不足の状況ですので、よいスタッフを雇いたくてもなかなか巡り合わないわけです。人が採用できないなら、自前で育てるしかないよね、でもせっかく育てるのなら、筋の良い人のほうがいいよね…と思っている中で、ふと、いとこのことを思い出しました。

小さな頃から知っている子たちなので、決して変な子たちじゃない。ちょっと引っ込み思案で、まじめで人付き合いが苦手な感じのところはありましたが、話せば普通に話せるし、パソコンとかも好きそうだったよな、どうしているかな、とどこかでずっと気になっていました。

一方で、フロンティアリンクという会社は、私自身は「在宅ネイティブ」と呼んでいるのですが、2006年の創業当初から、私自身が通勤がイヤという理由で完全在宅勤務で仕事をしてきました。今でこそテレワークは当たり前ですが、12年前にオフィスを持たず、完全在宅で業務を回していた会社は本当にごくわずかだったのではないかと思います。

そのような経験がありますので、IT系の仕事であれば在宅でできることはもちろん理解していますし、当社の教育システムはすべてクラウド化してありますので、自宅でも好きな時間に受講することができます。ひきこもりの人たちでもITであれば、ひきこもったままでも勉強してスキルを身につけ、ひきこもったまま仕事をすることができるんじゃないか、と思い至ったのです。

ひきこもり+在宅+IT=めちゃコマ

これがふと降りてきたのが、2016年の年末でした。

それからは、紆余曲折がありながらも、多くのひきこもり当事者と繋がり、中でもITやプログラミングに興味のある方に仕事を少しずつトライアル的にお願いしながら、ひきこもり当事者向けの「仕事保証付き」在宅ホームページ作成講座「ひきこもりサポート特別コース」の立ち上げを2017年7月に行い、実際にこの講座の卒業生を数名、フロンティアリンクで雇用しながら、ひきこもり界隈との関係を深めていきました。

ひきこもり当事者・経験者と仕事を進める中で思ったのは、想像以上のまじめさと細かさでした。もちろん、ひきこもり当事者・経験者の全員には当てはまらないかもしれませんが、私と一緒に仕事をしているひきこもりスタッフは「真面目すぎるくらい真面目」なので、納期を守ろうとするあまりに頑張りすぎて体調を崩してしまうということもあったりしました。

このため、現在でもマネジメントを行う上で気を付けているポイントの一つは「仕事し過ぎないようにする」ということです。また、細かさもひきこもり当事者・経験者の特色の一つだと思っています。ある意味で「こだわり」ともいうべき細かさを持ち合わせている人も多いのですが、ただしそれは「重箱の隅をつつく」ようないやらしい細かさではなく、仕事の経験が浅いが故の「手の抜きどころを知らない」「変な既成概念にとらわれていない」、言い換えれば「仕事を進める上で本質的に必要な細かさ」を持ち合わせている、と考えています。

ひとつ具体的な例を挙げると、とあるひきこもり当事者スタッフに、前述の「ひきこもりサポート特別コース」の受講者マニュアルを作らせたところ、「ここまで細かく作りこむか!?」というレベルの内容が上がってきて、感動したことがあります。この細かさは仕事を選べば強みになり、武器になる。それをうまく表現するにはどうしたらいいか…と思っていると、ふと降りてきたのが

「ウチらめっちゃ細かいんで」

という名前でした。しかも、ご丁寧に略称まで一緒に降りてきました。「めちゃコマ」ですね。これが下りてきた瞬間、これを会社にしたら面白いんじゃないか? と思ってしまった自分がいました。

必要なのは、「安全・安心」に働ける場

ひきこもり当事者・経験者は、潜在的に高い能力を持っている方が多い。でも、仕事をする上では職場に通勤したり、色々なコミュニケーションをとる必要があり、それ自体がハードルになっているのではないか。

だったら、そのハードルをすべて取っ払い、在宅で自分の好きなペースで、Webサイトを作ったりする仕事を黙々とできるのなら、ひきこもったまま、現在の状態を大きく変えることなく仕事をし、多少なりとも収入を得ることができれば、今の状況を変えるきっかけになるのではないか。

必要なのは、「安全・安心」に働ける場であり、それはひきこもり当事者・経験者のためだけに役立つのではなく、例えばシングルマザーや発達障害を持つ方など、生きづらさ・働きにくさを感じるすべての人たちに役立つのではないか。

そんな想いが重なり、ちょうど一緒に仕事をしているひきこもり当事者・経験者スタッフもある程度の人数になってきたこともあり、「めちゃコマを立ち上げよう」ということで、2017年12月1日に、実際にめちゃコマが生まれました。

設立の際には人生初めての記者会見も行い、創業メンバー6名のうち5名が参加して、厚生労働記者会にて日本で初めてのひきこもり当事者主体の株式会社設立を発表しました。翌週には早速、Yahooニュースにも掲載され、その後のメディア露出のきっかけにもなりました。

それから半年後に起こったのが、冒頭の「社長、お話があります」です。

この話に至ってしまった理由と反省点、それを踏まえたひきこもり当事者・経験者に対する在宅勤務マネジメントのポイントは、次回改めて書きたいと思います。

関連記事

おすすめ記事

最新の記事