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香港出身のスタートアップは語る、「フォーカスし続けるにはエストニアは最高だ」

(画像: クンロ・ウン氏 タリンのオールドタウン近郊にて)

Text:Estonian World
翻訳:東山 りつこ
編集:トイロハ・ワークス編集部

エストニアのスタートアップビザプログラムの恩恵を受けるアントレプレナーが増え続けている。香港出身のスタートアップファウンダー、クンロ・ウン氏もそのひとりだ。

2017年の初め、エストニアは新しいプログラム、スタートアップビザを始動させた。EU(欧州連合)以外の国の人々が、エストニアに居住して働くことを支援するプログラムだ。すでに起ち上げた会社のエストニアへの移籍や、エストニア国内での新しいスタートアップの起ち上げを認めている。これまでのところ、このスタートアップビザプログラムには、50カ国を超える国々から507件にも及ぶ申し込みがあった。

Estonian Worldは、現在このプログラムを利用してエストニアで働くひとりのスタートアップ・アントレプレナーを紹介する。香港出身のクンロ・ウン(Kwun-Lok Ng)氏だ。エストニア首都タリンからグローバルに展開するスタートアップ Kipwise を経営している。同社は、Slack (チームコラボツール) を使用したビジネスにおいて、日々やりとりされる情報をチーム全体のナレッジに変換するサービスを提供している。

ウン氏の仕事仲間やパートナーは、今でも香港をベースとしているが、彼自身は過去2年にわたってエストニアの首都に住み、そこでの生活をとても気に入っている。

フェリーの旅から起業へ

ウン氏が初めてタリンに足を踏み入れたのは、ヘルシンキのビジネスパートナーを訪れた時だった。フィンランドの首都から短時間のフェリーの旅だ。「港から歩いて、ファットマーガレットタワーの側のグレートコースタルゲートを通り、オールドタウンに入ったんだけど、その最初の印象といったら忘れられないよ」と、彼は回想する。「アジアで育った人なら、ヨーロッパ中世の建物にはとても感銘を受けるだろうね。香港では、一番古いビルでもおそらく100年くらいのレベルだから」。

最初のタリン滞在は、ほんの数時間だった。しかし、エストニアで就業したいと思わせるには十分だった。「僕はラッキーだったよ。Jobbatical社 (元記事注: 企業とビジネス、IT人材をグローバルでマッチングするオンラインプラットフォーム) に応募して、採用されたんだ。Jobbatical社は、ビザの申請や書類作成にまつわること全部をやってくれたよ」。

その後、エストニアのスタートアップビザプログラムの支援を受けて、ウン氏は8ヶ月前にタリンを本拠地とする会社Kipwiseを設立した。その選択に、彼は満足している。「海外のパートナーと打ち合わせするとき、アイスブレイクに『エストニアから参加している』と言うんだ。皆好奇心でいっぱいになる」と彼は言う。

地理的な好奇心はさておき、彼が最も評価しているのはタリンにおける緊密なスタートアップコミュニティだ。「これまで働いてきた都市の中では、サンフランシスコとタリンが一番好きだ。周りにいる人々と素晴らしい議論ができるし、ここのスタートアップコミュニティは本当に結束が固い。小さなコミュニティだからこそ、誰とでも顔を合わすことができる」と付け加える。「タリンの多くの会社は、有益なアドバイスをシェアすることに抵抗がない。それは、すでに成功を収めているスタートアップ企業のTransferWiseやPipedriveも例外じゃない」。

また、文化の違いについても経験している。「サンフランシスコでは、人に”How’s it going on (調子はどうだい?)”と聞いても、ただの挨拶でさして答えは期待していない。でも、エストニアでは、これはとても真剣な質問になり、核心的な答えが返ってくるのさ」。

 


進歩は希望

エストニアでの最初の3ヶ月、友人を作るのは困難だったが、それも最初のうちだけだった。「Jobbaticalで働いている間に友達ができたよ。あとは、その友達の友達を紹介してもらって、という感じだった」。エストニア語も習い、話す努力はしているものの、エストニア人はたいてい英語で返事をする。

彼がタリンにいて残念に思うのは、ましなアジア料理にありつけないことだ。エストニアに居住するほとんどのアジア人も同じ想いだろう。「最近は少し進歩してきたけどね。進歩が見えれば、希望も湧いてくる」と彼は言う。

ウン氏は、香港とエストニアを比較する場合にも、この「進歩」について話してくれた。「エストニアでは、政府も国民も、国を挙げてよい結果を出したい、改善したいという機運が見られる。香港でも同じような機運が起こればいいなと思うんだ。でも、香港は複雑な古いしきたりがたくさんあって、時々、変化を加えることがそう簡単にはいかないことがある」。

エストニアの良い点を香港と比較しながらも、母国香港におけるエストニアに対する認識は、現実とはまだまだかけはなれていると、彼は認める。「ここに来た頃は、友達がエストニアのことを何も知らなくて、『それってどこ?』と聞かれたものだよ」。 しかし、過去2年、 イーレジデンシープログラムとエストニアのデジタル社会のおかげで、エストニアは香港でもよく知られるようになってきた。「メディアも最近は興味を示していて、『エストニア、森でも無料Wi-Fiを提供』といった内容の記事が公開されるほどさ」。

 


グローバル社会の一員になるということ

エストニアのアジア料理の改善に関する意見はさておき、彼には別のアドバイスもある。ネットワークやコミュニケーション、学びをもっと強化するために、タリンで国際的なイベントを開催し、特に欧州からのインフルエンサーを招致してはどうかということだ。

「僕がアジア出身ということもあって、ヨーロッパ人のコンタクトはまだまだそれほど多くないけれど、そうしたイベントが役立つだろう」と彼は言う。「Latitude59 (元記事注: タリンで年次開催されるスタートアップと技術のカンファレンス) は手始めとして良い試みだし、今年の開催を心待ちにしている(トイロハ編集部注:この記事は今年5月15日に書かれたものですが、「Latitude59 2018」は5月24日〜25日にタリンで開催されました)。Slush (元記事注:ヘルシンキで年次開催されるスタートアップカンファレンス) も小規模から始まった。Latitudeも同じように大きなイベントに成長するだろうね」。

投資家目線ではエストニア拠点にしているということで問題が出てくるかもしれない、とウン氏はスタートアップとしての将来について語る。「例えば、フィンランドの投資家はエストニアに企業としての実体があるのを問題視しないが、その他の海外の投資家はアメリカやイギリスにあることを好む。投資家が言うには、弁護士がアメリカやイギリスの企業法しか知らないことが理由らしい」と説明する。一方で、エストニアに実体があることはもはや問題にはならないという確信も示した。「エストニアが作り上げてきたイメージをみれば、そんなに心配する必要はない。それに2つの実体を構えることだってできる。例えば、TransferWiseやPipedriveのようにね」。

冬こそ生産的になれる時

エストニアに2年間住んで、彼はすっかり落ち着いて幸せな気持ちでいる。「一度、香港のメディアに、よくエストニアに移住する勇気がありましたね、と言われたよ。でもエストニアに移住するのに勇気なんて必要ないよ。紛争中ならまだしも、ここには紛争地域もないし。そもそもどこかへ移住するのに勇気なんていらないよ。ただし、ビジネスとなると勇気は必要だね」。

彼はよく、エストニアの田舎を巡ったり、その道中でサーレマー島にある友人の田舎のコテージを訪れたりする。ためらいなく「ここの人たちは親切だし人なつっこい」と言う。

ここの冬さえも好きだという。「エストニアに来て、生まれて初めて雪を見た」そうだ。母国とは多くの違いがある中で、エストニアの長い冬のメリットを見つけ、香港の友人に冗談めかして言う。「フォーカスし続けるなら、エストニアの冬は最高さ」。

あなたも、エストニアの活発なスタートアップエコシステムに参加し、エストニアスタートアップビザに応募できます。

(この記事は、Startup Estoniaに掲載されたものです)

著者シルバー・タンバー

Estonian Worldの共同ファウンダー兼編集長。タルトゥ大学でジャーナリズム、ロンドン大学のバークベックカレッジで政治社会を専攻。エストニア国営放送局の英語ニュースサービスの編集を担当。英国の雑誌Business Senseや、Deutsche Welle、Radio New Zealandに寄稿。
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メールアドレスはsilver@estonianworld.com 。

 

オリジナル記事:Hong Kong startupper: Estonia is a good place to stay focused

 

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