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考える前に動け!電子国家エストニアで「とりあえず」精神で起業した

【Latitude59にて:Holviのco-founderであるKristofferさん(左)と、福岡のスタートアップ企業Medmainの飯塚さん(右)】

Text:中嶋雄士
編集:トイロハ・ワークス編集部

※編集部ノート
執筆者の中嶋雄士氏はエストニアのe-Residency(電子住民制度)を取得した後、会社設立まで実行した日本人のひとりです。エストニアに移動してから、「とりあえず」やる精神でまたたく間にグローバルなネットワークを拡げていくその行動力に、次世代の起業家のあるべき姿を見る気がします。今回はエストニアで起業した経緯と、その実情、そしてエストニアに集結する起業家をご紹介いただきました。

e-Residencyはエストニアでのスタートアップ設立の第一歩

今、日本でエストニアに注目が集まっているのは、やはりe-Residency(電子住民制度)があるからだと思いますが、エストニアの本質的な魅力というのはむしろこういった制度ではなく、国全体が持っている『スタートアップ気質』にあります。

エストニアでは自分のやりたいことがあり、熱意さえ持っていれば、その人の肩書に関わらず必ずその道のスペシャリストと繋がることができます。要はネットワーク構築の速さ、力が尋常じゃないということです。

この本質に惹かれた人こそがここでの起業にいたるのではないかと思うのですが、実は起業するプロセスも至って簡単です。

【e-Residencyは同封されているUSBスロットに挿して使用する】

e-Residencyさえ持っていれば、数ページのフォームに入力し、後は代行業者に手続きを依頼すると5日ほどで登記できたという報告が来ます。僕が実際に設立した時も、あまりにも簡単すぎて本当に会社ができたのか半信半疑でした。社名で検索をかけるとエストニアの会社情報一覧に記載されていたので、それで信じることができたくらいです。

このように、ビジネス面では世界中のどこからでも会社を運営できるというこの制度は確かに優れていますが、実際には「自分の国からリモートワークで頑張って」という意味が暗に込められており、現地への移住には何の役にもたちません。

リモートワークを広い意味で「移動しながら働くこと」と捉えるのであれば、e-Residencyはリモートワークのための制度ではありません。結局、この制度もエストニアの経済に貢献させるための手段としてうまく考えられたものであって、リモートワーカーのためを思って作られた制度ではないからです。

もう少し具体的に言うならば、エストニア政府はe-Residencyに、下記の3ステップでの経済発展を期待しているでしょう。

  1. e-Residencyの取得
  2. 会社設立
  3. 会社を回すことによる法人税

ちなみに今の段階では、日本は注力してe-Residencyを広めていきたいエリアからは既に除外されているようです。この理由の一つとしては、日本人が上記で説明したステップの早い段階でギブアップしてしまっているからだと、僕は思っています。

では、外国人がエストニアで起業するメリットは何なのか。一つは前述の通り、会社設立がものすごく簡単で迅速にできることです。場所を選ばず、「株式会社」としての信頼を獲得して活動したい人にとっては魅力があるでしょう。

また、法人税が20%と一律であることに魅力を感じる人も少なくないのではないでしょうか。僕は日本で会社を持っていないので主観的な比較はできませんが、例えば「日本国内で情報商材で儲けすぎてる」みたいな人が単純にエストニアに会社を移す、ということはあるのではないかと思います。

ただ、個人的にここで起業してみて感じているメリットとしては、世界で最も先進的なスタートアップ・マインドを持った人たちと対等に話ができることかなと思います。これは起業してエストニアに来さえすれば誰でもできることですが、グローバルなネットワーキングの輪の中にいるということは、何かにつけ大きなメリットになると考えています。

なお、e-ResidentをメインにしているHolviという銀行もあって、オンライン上に仕分け機能や、オンラインショップ機能等のさまざまなサービスがあるのでとても便利です。ただし、手数料が月35ユーロ(+取引額手数料も2.5%〜)と高いので、何も考えず使い始めてしまうと後からビックリします。

「とりあえずは行ってみるしかない」が、いつしかバーで友達づくり

僕は今年の2月末までTIS株式会社の社員として銀行系のシステム保守をしていました。IT系ということもあり、エストニアのことは名前程度は知ってはいたのですが、知人がe-Residencyを取得したというのをFacebookで見かけたのを機に興味を持ち始めました。それが昨年10月のことです。

それから11月に申請して、ちょうど2ヶ月で僕のe-Residencyが準備できたとの連絡がありました。大使館に取りに行ったのは退職間近の頃だったのですが、これを受け取るとエストニアへの興味が一気に加速しました。

【e-Residencyを大使館に取りに行った時。大使のArgoさんと】

「とりあえずは行ってみるしかない」と思い、すぐに航空券を取りました。さらに行くなら話題にもなるだろうと、起業も検討を始めました。そしてできたのが僕の愛する”TORIAEZU OÜ”という会社です。日本語に直すと、「とりあえず株式会社」という意味になります。

当時は本当にこの会社を動かすなんてことは考えておらず、「CEOになれたらカッコいいし、一年世界を周って貯金が尽きたらどこかの会社へコネで入れたらいいな」なんてことを考えていました。

ところが、実際にエストニアに来てみると世界遺産に登録されている旧市街の風景に惚れ込み、来て5日後には移住を決意していました。着いた日に入ったバーで知り合ったエストニア人が「こっちに住んでる日本人を紹介するよ!」と言ってつないでくれたおかげで、日本人コミュニティにもスムーズに入って行けたのもよかったです。

ただ、来てはみたものの、何の目的もありませんでした。そこで、3週間後の帰国までに友達を100人作る!という目標をたてました。そのため、”毎日友達を作らなければならない、できなかった日には夜バーに飲みに行って知らない人に話しかける”という僕のエストニア独自ルールを設定しました。

毎日いろんな人と話してブレストしていると、エストニアにいながら自分の会社で働いて生きて行く方法もあるのではないか…と考えるようになり、とりあえずはサービスを初めてみる事にして、Webページを用意しました。驚いた事にここから問い合わせも来るようになり、現在は日本の法人向けスタートアップ企業訪問ツアーや、市場調査、このようなメディアへの執筆を生業としています。

Latitude59で広がるスタートアップ・マインドの輪

さらに、5月にはエストニア最大のテックカンファレンス”Latitude59”がありました。

【Latitude59のオープニングトーク】

このカンファレンスは20ヶ国から2,000もの人が参加しており、正に「エストニアのスタートアップ・マインド」を体現するようなイベントでした。これまで成功したスタートアップ企業のファウンダーのスピーチや、各スタートアップ企業のピッチコンテストも開催されました。

日本からも100人を越える人が参加しており、有名どころで言えば孫泰蔵さんも参加されていました。参加者には投資家が200人、スタートアップ企業が150社も含まれており、彼らのマッチメイクの場にもなっています。

面白いのは、そのマッチメイクも半分はネット上で行われているということ。Brellaというアプリに自己紹介を登録しておき、あらかじめそこで興味がある人同士が繋がっておいて、では会場で会いましょうという流れで、会場にもミーティング専用スペースが設けられ、広いスペースにも関わらず常に満席の状態でした。

また、アフターパーティではライブの特設ステージが用意されており、バンドの奏でるリズムに乗りながらヨーロッパ各地のスタートアップの人たちと交流しました。

他のヨーロッパ人がこの国に集まるのはもちろんスタートアップの中心であることがメインの理由ではありますが、もう一つの大きな理由としてはまだまだ賃金が安いというところにあるようです。参考までにエストニアの平均賃金などが記載されているページリンクです。平均賃金は日本の約1/3、この値はIT分野の人が押し上げているので、中央値はさらに下がると言います。

Latitude59では思い切ってMeetupイベントを仕掛けたのですが、これがヒットしました。Latitude59側からも公式にフォローアップイベントとして認められ、100人ものスタートアップ・マインドに満ち溢れた参加者が僕のイベントに来てくれました。

エストニアのメディアにも取り上げてもらえました。そこでの繋がりから仕事をいただくようになり、本当にラッキーな感じです。

エストニアで知り合ったスタートアップたち

エストニアでの出会いはここで終わらず、夜のバーを起点にしてさまざまな場所で交流を深めています。例えば、現在Teleportというサービスを提供している会社のco-founderのSilverさん彼は10ヶ国語を操り多拠点生活を実現している一人です。スカイプの初期のSenior Research Engineerを勤めたあと、自らの多拠点生活の経験を元に、今のビジネスを考案してローンチしています。

このTeleportでは、利用者がどのような環境のところに住みたいか、そして現実的な予算を入力すると、オススメの移住先が提案されるという、正に彼にしかできないサービスを提供しています。

【Teleport / 上:自分の条件を選択する、下:結果画面】

彼のところにはMistletoe株式会社の先名さんと一緒に会いに行きました。この方には孫泰蔵さんの会社でビジネスプロデューサーとして働いていたバックグラウンドがあります。

「PDCAの順番で回すと、ある程度頭の良い人だと結局同じような結論に至る」という話題になったとき、先名さんから「先にアクションを起こした方が革新的で面白い。失敗をしてもそれを経験することが大切だ」ということを教わりました。

【右から2番目が先名さん、その2つ隣がSilver】

次に紹介したいのは、LINGVISTのco-founderであるOttさん。LINGVISTはディープラーニングで言語学習を加速させる企業として2013年にエストニアで誕生した企業で、「エストニアで最も成功したスタートアップ企業」のひとつとして知られており、楽天もここに投資しています。

彼と話していて一番印象的だったのは「どこで何が起こるかわからないから、いろんな人と会ってたくさん話すことが大切」ということでした。

【LINGVISTのco-founder Ottさんと】

もう一人、やっぱり外せないのがTaaviさんです。この方はCONVERTALというECやメディア関連の会社を経営しているCEOで、バーで出会って友達になりました。「エストニア語の勉強がしたいので、日本のことを記事に書いたらメディアに載せてほしい!」と言ってみると快諾してくれました。

また、Latitude59の後に企画したMeetupにも参加してくれて、その時のことを記事にもしてくれました。

【CONVERTALのfounder Taaviさん。Meetupに来てくれた時】

考える前に行動すること

電子国家として騒がれているエストニア。僕がここを選んで良かったと思えるのは、ブルーオーシャンに飛び込む感覚が味わえたこと。そして、僕の信念「TORIAEZU」は世界で通用するかもしれない、そう感じることができたことです。

前述Silverさんは日本語がわかりますが、「TORIAEZU」という言葉を知らなかったので説明したところ、「それは日本人に一番足りない精神だよ」と面白がってくれました。

そして先名さんも言われたように、これからは考えてから行動するよりは、まずやってみることが大切だということは、実際にエストニアにやって来て強く実感しています。

 

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